ふぁんトントの特選コースガイド「瀧寺跡磨崖仏(奈良市大和田町)」
2016/01/11
瀧寺跡磨崖仏は矢田丘陵中部の東斜面(奈良市と大和郡山市の境界付近)にあり、高さ3.35mの花崗片磨岩の崖面に仏堂と仏像が刻まれています。木造の覆い屋に囲まれて守られている磨崖仏は、昭和54年3月23日に奈良県による指定史跡となりました。
瀧寺跡磨崖仏(奈良市大和田町)
手前の石仏は千手観音菩薩像・大永三年三月廿七日(1523)
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※文中に”G+”と付された語句はGoogle+のフォトアルバムへ、”Gmap”はGoogle Mapsへそれぞれぞれリンクしています。
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まえがき -Prologue-
奈良時代から伝わるという磨崖仏は、石造遺物が多く散在する奈良県においても、大変貴重で珍しいモノです。五か所ある奈良県指定史跡(三陵墓古墳群、尾山代遺跡、石打城跡、塔の森、瀧寺跡)の内の一つで、京阪神から比較的容易なハイキングコースで訪問できる場所にあります。
冒頭に記した矢田丘陵中部には県立矢田自然公園があり、遊歩道が整備されオールシーズン憩いの場所、ハイキング・トレラン・マウンテンバイクなど多彩な楽しみ方が可能です。
子どもの森には広々とした無料休憩所があり、矢田丘陵周辺のハイキングマップが8種類と公式パンフレットが入手できます。しかし、周辺の案内図やパンフレットにも瀧寺跡磨崖仏へのルートは記されていませんでした。
瀧寺跡磨崖仏について
それでは、瀧寺跡磨崖仏G+についての概略を奈良市石造遺物調査報告書(1989)から一部を抜粋・要約してみましょう。
瀧寺跡の所在地は奈良市大和田町で大和郡山市との境界線に近接する位置にあります。細粒質花崗片磨岩の崖面(約3m四方)に仏堂と仏像が刻まれています。
全体に浮彫の技法が用いられ、堂塔は薄肉彫り、五区画に矩形の仏龕に仏像が刻まれています。堂塔には二基の塔と金堂、講堂、鐘楼、中央上部の建物に重層の楼閣がある。左端の建物の軒先に風鐸がかかり、鐘楼には鐘と撞木が見られる。
仏塔は左右に二基(三層)で、下辺には舎利孔がある。仏龕の仏像は三尊仏が並び、中央上部の仏龕には天蓋の下に三尊仏が二組置かれている。向かって右の中尊の光背には千体仏が表わされている。。。
報告書にはさらに詳細な磨崖仏の解説があり、撮影した写真と照合するのも一苦労です。ここでは一部を紹介するにとどめ、興味のある方は同報告書をお読みください。
瀧寺跡磨崖仏G+
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さて、京阪神から手軽に行ける場所ではあっても、道順が不案内では困りますね。現地では案内板に明確な表示がなく、入手できるマップにも記載がありません。
唯一「滝寺へ」と表記されたマップ(無料休憩所にて配布)
矢田山遊びの森ハイキングマップNo.5(H25.6)
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インターネットで調べると、一様に休憩所の事務所で尋ねるようにと書かれています。そんなに分かりにくい場所なのでしょうか。
特選コースガイド・初級コース
というワケで、近鉄生駒線・富雄駅から県立矢田自然公園の子どもの森まで歩いたあと、奈良県指定史跡「瀧寺跡磨崖仏」を見て帰るという手軽なハイキングコースを案内してみたいと思います。
子どもの森(全体は広大な矢田山遊びの森)
子ども交流館(無料休憩所、トイレもある)
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「矢田山遊びの森・子ども交流館」のパンフレットによれば、同地へのアクセス方法は複数存在するようです。いずれにしても直接乗り入れる交通手段はないでの、周辺から歩くかマイカー利用ということになるでしょう。マイカーでは周回コース一択となるので、今回は歩きを前提にします。
近鉄富雄駅
近鉄富雄駅の南口を出て、三碓一丁目から旧道を歩きます。途中の見学ポイントは昨年刊行された「生駒の古道(生駒民俗会)」で紹介され、当ブログでもその足跡を訪ねています。
足に自信のない方は、霊山寺バス停Gmap、または若草台中央バス停Gmapまで奈良交通の路線バスをご利用ください。時刻表は以下を参照のこと。
奈良交通バス時刻表:近鉄富雄駅1番乗場
※PDFファイルにリンクします。
いずれの場合も、暗越街道(国道308号)を大阪方面に登っていくと、やがて子どもの森への分岐点に到着します。
この先です。
県立矢田自然公園(子どもの森)
無料休憩所でゆっくり昼食休憩を楽しむといよいよ瀧寺跡磨崖仏へ向かいます。峠池を時計回りで南へ進み、池の南から遊びの森遊歩道の山道を南へ歩きます。
道の真ん中に街灯の立つ分岐
滝寺を示す道標は真っ二つに割れている。
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分岐を左折して谷筋のルートを東へ辿ります。道はよく踏まれていて明瞭ながら、倒木や折れ枝が堆積して歩きにくい、道の左手谷側には、竹林混じりとなりおそらく棚田跡と思われます。やがて、左手の木に「滝寺」と書かれた道標を見落とさないようにしましょう。
黒いプラスチック製(箱の蓋?)でちょっと見にくい。
右下に「亀田製菓」の文字が浮かぶ
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ここを過ぎると道は谷筋が狭小となり、右岸側の踏み跡を辿るようになります。左岸側に棚田跡が残るスペースがあり、そこへ進まないようにしましょう。
末吉○○大々神と刻まれているようですが、意味はよく分かりません。水源に近いので水神さまを祀っているものと思います。
瀧寺跡磨崖仏
石碑を過ぎると、右手に大きな建物が見えて、それが瀧寺跡磨崖仏を囲む覆い屋だとすぐにわかるでしょう。前には屋根付きの説明板もありますが、文字がかすれてよく読めません。
覆い屋には鍵は掛かっていません。格子戸を紐で結わえてあるので、解いて中に入って近接で撮影可能です。摩耗が激しいので、表面を手で触ったりなさらないようにお願いします。
三段に落ちる滝を見て下山
下山路は石灯篭のあるあたりから先ほどの谷道に通じています。季節によっては下り口が草に隠れているかもしれません。その場合は元に戻って、谷筋の踏み跡を下ってください。
振り返ると磨崖仏の覆い屋が見える位置を通過するでしょう。無事に山道に復帰できたなら、そのまま谷底へ続く踏み跡を辿ります。ほどなくして左岸側へ渡河するポイントに到着します。
ロープの痕跡が残っていましたが、支えになるものは何もなく、流量も少なくはありませんので、滑らないように注意して渡ります。
ここからの様子は動画でどうぞ
ちょっと不気味な洞窟をプチ探検
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滝周辺は行場になっており、水神さんを祀る石碑も多数置いてあります。
現在は管理する人が不在だと思われます。滝寺の命名の由来は、動画で紹介した三段の滝でしょうか。そうだとしたら、この滝見ずして「滝寺」を語るなかれですよ。
大和民俗公園
滝周辺は荒廃していて、ちょっと不気味な雰囲気が漂っていました。今は行をする人や参拝する人もいなくなったのでしょうか。山道を出て溜池を過ぎると明るい棚田風景が広がっていて、気持ちが晴れ晴れとするでしょう。
大和田町の長閑な田園風景に食傷気味になった頃、大和民俗公園の北端に到着します。
時間の許す限り公園内を散策なさってください。舗装路だけでなく里道も保存されていて、ゆっくり過ごすのに好都合な場所です。園内には茅葺屋根の民家が数軒移築されて保存されています。
帰りは奈良高専(奈良工業高等専門学校)の広いグランドを左に見て南へ進むと、県道189号と交差する信号にでます。交差点を左折すると奈良交通「矢田東山」のバス停Gmapがあり、一時間に三、四本(時間帯による)のバスが近鉄郡山駅へ運行しています。
奈良交通バス時刻表:矢田東山バス停
(平成27年3月14日改正)
健脚向けバリエーション・コース
子どもの森(無料休憩所)でハイキングマップを忘れず入手のこと
No.1~No.8まであります。
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紹介したコースだけでは歩き足りないと感じる方には、矢田山遊びの森ハイキングマップNo.2(H25.6)を参考に矢田寺を見学して矢田峠から近鉄萩の台駅へ出るコースや、東明寺を見学して東明寺参詣道を経て同じく近鉄萩の台駅へ向かうと良いでしょう。
富雄三碓~奈良中町~矢田山子どもの森~滝寺跡~東明寺~乙田 [山行記録] – ヤマレコ
※後半部分が東明寺ルートです。
東明寺参詣道のルートは、ふぁんトントのヤマレコ(山行記録)などを参考になさってください。
では、また。
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