幻の古道「別院川から榁ノ木峠(暗越旧街道探索)」
生駒の古道(生駒民俗会、平成14年)のコラム欄で紹介された「幻の古道ルート(38p)」を歩いてきました。
11月22日の山歩きで上部(合流点)付近は下見しました。下見で分かったことは、地形図では読み取れない支尾根が東西に延びていることでした。
酷道と揶揄されるこが多い国道308号線(暗越街道、伊勢本街道の榁ノ木峠付近)
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生駒の古道(生駒民俗会)
生駒の古道 -生駒市古道調査- 生駒民俗会
平成14年刊行、生駒ふるさとミュージアムなどで入手可能
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昨年から歩いてきた「生駒の古道(以下、本書と言う)」に区切りをつけるときが来ました。すべてを当ブログで紹介しているわけではありませんが、本書に紹介された古道の様子を伝えることで、毎回の山歩きがとても楽しかった。感謝申し上げます。
幻の「生駒の古道」に挑戦-暗峠・宝山寺道
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今後も動画やブログを通じて現状についての情報を発信していこうと思います。今回の「幻の古道ルート」の概略は以下の通りです。本書より引用いたしましょう。
安永年間以前、暗峠街道の旧道は榁木峠より北方の松林の尾根を通り、一分小学校の南側に出て小川(別院川)に添って下り、真直ぐに竹林寺を目標にして西進し、竹林寺の東麓に突き当たる。
(本書38p、コラムより)
※安永年間とは1772-1780年の期間を指しています。
上から下るのは急斜面で危険が伴いますので、南生駒駅から榁ノ木峠を目指すことにしました。
幻の古道ルートを歩いてみる
ヤマレコの山行計画より
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計画では下見の際に見つけた谷筋ルートを下からアプローチして繋げることから始める予定でした。そこは「予定は未定」をモットーにしていますので、現地に着くといきなり古道歩きから始まりました。
それではスタート。(写真のG+マークはGoogle+フォトアルバムへのリンク)
近鉄生駒線「南生駒駅」
駅前で準備をして歩き始めてまもなく興味深いモノを発見しました。生駒市石造遺物調査一覧表(平成8年)によると、天文十七年(室町時代)に造立されたものと分かりました。横にある自然石六字名号碑は天正九年(桃山時代)の作です。
観泉寺にて
観泉寺の境内から真正面に天照山を拝むことができました。ここでの必見は康永四年(南北朝時代)の銘を刻された十三重層塔です。一層目から五層目までの欠損がみられますが、軸部に陰刻された金剛四仏の種子が立派です。他にも見るべき石造遺物が多数残されていました。
別院のモリ(別院社)
往馬(生駒)神社春日社別院(Google Maps)
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周囲は開発されてコンクリートに囲まれています。別院川のたもとに森が残されていました。説明書きによれば、ここはとても神聖な場所だということがわかります。
別院川
矢田丘陵に源を発する別院川
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本書の引用文書である「ふるさと生駒」(第26号)では「小川」と表されていますが、立派な一級河川でした。両岸に整備されて舗装された道があり、右岸側をずっと辿りました。
左手に壱分小学校
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壱分小学校の南側は田園地帯が広がるのどかな風景に開発工事が交錯するエリアでした。春先や稲刈りシーズンに再訪してみたいと思います。
神武峯を仰ぎ見る(写真左の鉄塔、四等三角点が設置されている)
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さつき台の南側はまさに開発中、重機による工事が景観を破壊していました。ほどなくして、その重機越しに神武峯と山頂付近に立つ平群支線5号と6号の鉄塔を間近に視認できます。
北山橋を越えると矢田丘陵遊歩道の迂回路と合流する
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矢田山遊びの森ハイキングマップNo.6(奈良県)
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北山橋から先は里道風景となりました。遊歩道の迂回路として利用されているので道標なども設置され歩きやすくなっています。山行計画で予定した第一探索ルートはスルーして、気が付いたら鉄塔巡視路の入口に着いていました。
鉄塔巡視路を示す火の用心(平群支線6号)
幻の古道
鉄塔巡視路に突入(平群支線6号)
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予定は未定ですから、後戻りするのはやめて古道探索に着手しました。しばらくは巡視路らしい道、ほぼ人幅に笹を刈り込んだ道です。慣れないと不安を感じるでしょう。
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古道現る!
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ほどなくして、それまでとは雰囲気が一変しました。半円筒状に彫り込まれた幅広の道、間違いなく古くから使われている道ですね。
分岐、火の用心は左のルートを示す。
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ここまでなら何らの問題なく歩くことができます。慣れない方や単独では決して先に踏み込まないでください。戻って遊歩道を歩くことをおススメします。チャレンジャーは、右手の古道ルートを進みます。すぐに不明瞭となり壊れた植林小屋の付近で道は消滅します。まさに幻のように。(湿地帯に注意)
分岐から先の区間も撮影していますが、掲載は見送りました。但し、踏み跡の痕跡は発見しています。
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分岐の先は植林の広がる谷となり、草深くなってきます。沼地になっているところもあり、足元をストックで探りながら進みました。谷を横断すると地理院地図では読み解けない支尾根の先端に出ることができました。古道はこの支尾根の山腹辺りを緩やかに高度を上げていたと思われます。踏み跡の探索は雑草に阻まれて不可能に近いので、支尾根を強引に登ることにしました。
取り付きは急斜面です
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測量杭があったので目印になるでしょう。しかし、最初の登りがかなりキツイ。少しよじ登るとケモノ道に近い踏み跡があったので、ジグザグに辿りながら高度を上げていきました。
合流点のマーキング
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緩斜面になってくると尾根の踏み跡が明瞭になってきます。植林作業の杣道でしょう。雑木を左右に迂回しながら進むと、平群支線の鉄塔巡視路に合流できます。合流付近には黄色の太いテープでマーキングされています。
古道歩きは面白い
「幻の古道」はやはり幻でした。上から下ってみれば、もう少し道跡が見つかるかもしれません。谷筋の道は人が歩かないと消えてしまいます。おと越や立石越でも同様で古道跡が残されているのは尾根筋に近い所です。
立石越の旧道
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立石越はかつては服部川を遡上する谷筋ルートでした。大雨で流失することが多く大正七年に現在のルートに付け替えられたと云います。おと越のある谷を「ガイ谷」と呼び、同様に暴れ谷で砂防堰堤は大窪地区の悲願であったことでしょう。
おと越の砂防堰堤(2014年完成)
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というワケで、今後は地元の高安山を中心にした古道歩きをしたいと思っています。自宅から山麓まで自転車で行けるので、手軽に探索できますしね。
では、また。
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