ストリートビュー撮影山行の記録「ハイブリッド・バーチャル・ツアーの巻」
2017/10/21
今回のストリートビュー撮影山行では、生駒市藤尾町の「石造阿弥陀如来立像」をご紹介します。お堂周辺の撮影はリコー社の新製品”THETA V”を使用しました。
資料によると、「昔から館の中にあるから”はづかしがりの地蔵”の愛称で土地の人は信仰している」と紹介されています。「館」は「屋形(=覆い屋)」の事と思われますが、「阿弥陀さんじゃないの?」と思われた方もおられるでしょう。
昔の人は石仏なら何でも「地蔵」と呼んでいました。中には石碑や道標まで「地蔵」と呼ぶ。お地蔵さんは、石仏界の「なんでも屋さん」なのですよ。
ストリートビュー
事情を知らないと、うっかり見落とすことになりそうです。
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静寂と忘却が漂う藤尾阿弥陀堂
ローカルガイド・プログラムが始まって2年余り。ますます混迷の度を増すグーグル・マップのリスティング。なぜか今まで「藤尾阿弥陀堂」は、登録されてなかったのです。
撮影前の登録作業で気が付いたことがありました。お堂前の道はかつての伊勢街道で現在の国道308号線です。江戸時代から「暗越奈良(大坂)街道」として広く知られているのはご存知の通り。地図で見ると、お堂周辺は大きく湾曲しています。かつては難所の一つとされ交通渋滞の原因となっていました。現在の直線ルートは、2012年頃に付け替えられたのです。以来、お堂周辺は静かになったものの、ストリートビューは2009年以来更新されず放置されています。
2009年で更新が止まったストリートビュー
道路上の本家ストリートビューは、グーグルさんが定期的に撮影して画像を新しいモノに置き換えておられます。最近では、タイムスライダーの機能が復活したので、数年前に遡って、変わりゆくさまを確認できるようになりました。
国道308号線は拡幅・整備され、大阪奈良間を結ぶ道路として広く利用されています。しかし、マイカー利用者には「酷道」と揶揄される程不評です。狭い上に急こう配なのが原因でしょう。主な難所は大阪側にあるのですが、阿弥陀堂前の湾曲部分は特に狭く不便を強いられていたようです。工事の様子は、ストリートビューにも記録されていました。
ストリートビュー
以上のような考察から、今回のストリートビュー撮影山行では、藤尾阿弥陀堂の紹介にとどめず、広く周辺の道路を含めて撮影を行い、シータ画像とアプリ画像を融合させたハイブリッド・バーチャル・ツアーの完成を目指します。
「シータ(THETA V)×アプリ(SVA)」で相互補完する
ここで脱線して、ハイブリッド・バーチャル・ツアー作成のヒントとなった「穴太神社」のバーチャル・ツアーを紹介したいと思います。シータの導入は、撮影の可能性を大きく広げました。狭い場所や足場の悪い場所などでは、シータの「小型・軽量」をいかんなく発揮し、広い場所では高画質な画像を撮影できるアプリにバトンタッチします。両者をミックスすることで、それぞれの特徴を活かし欠点を補う試み。それが「ハイブリッド」のキッカケでした。
今昔マップ
穴太神社は八尾市に伝承される聖徳太子ゆかりの地、間人穴穂部皇后(聖徳太子生母)の生誕地として知られています。かつて周辺は田んぼに囲まれた深い森となっており、夜になると行灯や提灯に頼っていた時代、「キツネやタヌキが出て人を化かす」という伝承が数多く残っています。現在では、周辺の宅地開発が進んで、境内も狭くなってしまいました。境内に立つ天然記念物の「くすのき」からも往時を偲ぶことはムツカシイ。
ストリートビュー
境内の中央部でアプリ撮影をしていてふと思いました。
「あの赤い鳥居を撮影するのは、シータ以外に考えられない!」
境内の北側にあるのは、「半九郎稲荷大明」です。鳥居に刻まれた多くの寄進者名は、広く信仰を集めていることの証左です。背の低い鳥居の先には、立派な「半九郎稲荷大明」の祠が立っています。と言うワケで、後日、THETA Vで追加撮影を行いました。
ストリートビュー
参道入り口の鳥居から拝殿前まで6枚の画像を撮影して連結しています。Velbon EX-Mini S(ミニ三脚)で固定して、ローアングルからタイマー撮影しました。設定は「ISO優先:ISO100固定 Ev+0.3~0.7」で、HDRは使用していません。屋外のような単一光源の場合は、HDRよりもISO100固定の方が綺麗に撮れる上にブレが少ない。では、細部をアプリ撮影の画像と比較してみましょう。
ほぼ同じ位置で撮影した画像に駐車車両のナンバープレートが写っていました。アプリ撮影では、「ボカシ必須レベル」で映り込んでいます。一方で、シータ画像は画質が向上したとは言え、解像度は前モデルのTHETA S/SCと同じ。200%に拡大しても数字を読み取れません。これは、いわゆる「天然ボカシ」ですね(笑)
THETA Vに期待することは、飛躍的に向上した「操作性」にあり。次回で詳しくレビューします。
THETAアプリのUIも大きく変わっています。直感的なカメラ・ボタンが採用され、画面の切り替えもスムーズです。THETA Vの発売によりTHETA Sは廃止となりましたが、廉価版THETA SCに非対応だった一部機能(ブラケット撮影、色温度設定など)が、ファームウェア・アップデートで使えるようになりました。
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アプリ(SVA)撮影の問題点
一方で、ストリートビュー・アプリ(以下、「SVA」と略します)も地味な進歩を遂げており、Stitching(合成)性能が向上しています。一脚を利用するなどで、繋ぎ目に大きな破綻なく撮影出来れば、THETA Vでは到底届かない高画質な360°パノラマ写真を撮影可能です。半年間、アプリでの撮影をサボっていましたが、8月から再開しています。
再開からしばらくして、これまで1,000枚以上の360°パノラマ写真を撮影してきたXperia J1 Compact(D5788)に異変が起きました。Andorid OS(4.4.4)のバージョンが古くなっていることが気になります。明らかにハードウェアの不具合で、最終的な仕上がりに「カオナシ現象」と呼ばれる欠損画像を連発。ローカルガイド・コネクトで「リブートが必要」と良きアドバイスを得ました。しかし、「穴太神社」ではなんとか切り抜けたものの、破綻部分を誤魔化すのに相当手間取りました。もう無理かも知れません。
マルチフロア化とアイランド間接続
一般的には同一の建物内で複数の「階(フロア)」を階層状に繋げるため使用されており、SVAにこの機能は提供されていません。穴太神社に「階」はありませんが、「マルチフロア機能」を使って、THETA VとSVAで撮影した画像をエリア分けしました。前者は”ThV”と記し、後者は”SVA”としました。(上図参照)
一つの「階」から別の「階」へ矢印を使っての画像連結は不可能です。いずれ機能的に実現できるそうですが、そんなの待っていられません。ローカルガイド・コネクトで得た情報を元に、より直感的な矢印でも移動できるようにしました。ある意味実験的な試みですが、「島(”islands”)状に配置した画像連結(”Constellation”)を相互結合する」ことに成功したのです。
最後の部分は、プロ向けのメッセージです。とにかくいろんなモノをごちゃまぜにしたという意味でも「ハイブリッド」なのです。次回は、これらの実証実験を踏まえた上で、藤尾阿弥陀堂のバーチャル・ツアーへご案内したいと思います。※マルチフロア機能は、サードパーティから提供されるツールで編集可能です。
本日は、紙面が尽きましたゆえ、この続きはまた明日。
※2017.10.20現在、Elevator Widgetが消える不具合が発生しています。原因が徐々に判明して来ましたので、後日報告します。
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