生駒の古道ー生駒市古道調査ー
2016/08/06
生駒民俗会(会長:今木義法氏)より、平成22年から生駒市内全域の古道調査を実施し、その成果をまとめたものがこのほど出版されました。
生駒市は奈良県の北西部に位置し、生駒山系で大阪府側の各市町村と境を接します。「生駒の古道(以下、本書という)」は、生駒市内に現存する古道の痕跡を一つ一つ訪ね歩き、今に伝わる伝承を聞き取るという途方も無い活動の集大成です。大阪側に住まいする者にとって、生駒市の北部地域は近くて遠い存在でした。近年開発が進みJR片町線は学研都市線として生まれ変わり、近鉄けいはんな線がさらに大阪圏との距離を縮めています。
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石造遺物は語る – 古いモノほど新しいという事実
便利にはなれば、古いものはどんどん消えてなくなります。旅人で賑わった街道も例外ではなく、やがて人々の記憶からも消え去るでしょう。本書によると、生駒市北部は伊勢街道の十字路にあたり、中継地として重要な役割を果たしてきたとのこと。今日に残る道標や石仏がそれを静かに語っています。
それらを訪ね歩くのが古道歩きの醍醐味ですが、本書が唯一無二の指南書であることは間違いありません。
国道308号線は生駒山中の暗峠を境に名称が異なるのだそうです。本書では、度々「暗越大坂街道」という言葉が使われています。
言うまでもなく、この街道は前述の伊勢街道に接続する街道として広く知られており、暗越奈良街道というのが一般的です。
しかし、それはもっぱら河内側(大阪)の呼び名であり、大和側(奈良)では暗越大坂街道と呼ぶのだと言うことです。街道の名称というのは目的地を元にして定められたもので、現代のように地図が一般的でない時代には、路傍の道標と街道の呼び名は重要であったに違いありません。
伊勢街道と言えば、目的地は「お伊勢さん」であり、紀州街道は和歌山ですね。異論はあるかもしれませんが、街道の名称が複数存在するのは珍しくありません。紀州街道も途中までは住吉街道と呼び習わされています。暗越大坂街道と言う呼び名が相応しいかどうかは議論の余地があるでしょう。
本書を読めば、この名称にこだわる生駒民俗会の方々の忸怩たる思いは十分理解できます。是非、本書を手に取って共感していただきたいし、他山の石にせねばと思います。本書を手がかりに奈良側から暗越大坂街道を西へと歩めば新しい発見があることでしょう。
また、宅地開発の影響で消え行く北部地域の古道の面影を追い求めて見たいと思います。手始めに比較的土地勘のある「京みち」から歩いてみました。
2014/05/24 古道ウォーク・「京みち~西菜畑薬師堂~竹林寺~千光寺行場」
前半部分が「京みち」探訪記です。参考になれば幸いです。次の週末は矢田道を予定しています。では、また。
追記:
紀州街道のことを和歌山では大阪街道と言うらしい。
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