昭和の歴史遺産「生駒山航空灯台」の跡地を訪ねる
2018/10/22
昭和初期(昭和7年~8年頃)になると、郵便物等の運搬を航空機で夜間に定期的に行うようになりました。これら夜間飛行の安全に寄与したのが、航空灯台が放つ閃光だったとのこと。
太平洋戦争の戦況が悪化するとその多くが消灯されたものの、戦後になると復活して日本の民間航空を支え続けました。やがてテクノロジーの進化により、一部を除いて各地の航空灯台は廃止・撤去されることとなり、その数少ない例外が、生駒山(山名:鬼取山)の航空灯台を再利用した「近鉄生駒山無線局」でした。(※生駒山航空灯台)
+Yoshikatsu Okunoさんが2016年3月に撮影
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昭和の歴史遺産がまた一つ消えた
2016年1月ごろ通りかかった際には足場が組まれて作業中でした。5年ほど前にも修復工事などが行われているので、さほど気にも留めずに遠目に見て通り過ぎました。しかし、その直後に撮影された360°パノラマをGoogleマップで見てびっくりしました。建物は取り壊されてすでに更地になっています。
2016.08.30撮影
昭和初期に整備された航空灯台
「戦前の航空灯台」に関する資料は乏しいようです。神戸史学会「歴史と神戸」 53巻5号(通巻306号、平成26年10月1日発行)に次のような記事が掲載されました。
記事には第一期から五期まで整備された各地の航空灯台に関する資料が詳細な別表で示されています。
交野三山縦走(交野山・旗振山・龍王山)
別表の資料によると、交野市の龍王山にも設置されていたことが分かります。山頂にある雨乞い岩の北側あたりです。
源氏の滝から交野三山縦走(交野山~旗振山~龍王山) | YAMAP 山登り・アウトドアの新定番
2016年3月上旬に源氏の滝から交野三山を縦走して航空灯台跡地を見てきました。交野山周辺のルートは多数存在します。交野市が指定する文化財が多数点在する「石仏の道」と絡めた縦走ルートがおススメです。
Google マイマップ – 石仏の道(交野山・ご来光道)
龍王山の航空灯台跡
航空灯台の跡地は意外にも簡単に見つかります。遺品と言っても石仏と違って昭和初期には現役だったワケですから。。。
コンクリート礎石が4つ残っていました。鉄骨の根元も確認できます。
比較的状態がイイです。切り取られた鉄骨の根元部分が残っています。
倒木の根が斜めにかかっています。
ちょっと落ち葉に覆われていました。払いのけて撮影。
この礎石は土に埋まっていて、少し掘り起こしました。基礎の結界面積からもわかるように、そんなに高い鉄塔ではなかったようです。現在の送電鉄塔を見てもわかるように、高い鉄塔は結界も広い。
当然といえば当然ですが、前述の資料には鉄塔の高さなども記載されています。
資料に見る「龍王山航空灯台」
設置年から第二期航空灯台に分類されています。
設置年:昭和14年 廃止年:昭和18年 高さ :5.5m
増設、移設、改造、撤去を繰り返した航空灯台の数奇な運命を想起させますね。太平洋戦争の戦況悪化で消灯され、鉄骨は剥ぎ取られ、溶かされ、、、
悲しい歴史です。
まだまだある? 航空灯台の遺構
生駒山系以外の航空灯台跡地も訪問しました。
一覧表には、遺構の現存が確認されたものに印が付いています。著者・柴田氏の脚注によると、『全てを網羅したわけではない』とのこと。探せば新たな発見があるかもしれません。興味のある方は、「歴史と神戸」を読んでみてください。バックナンバーは、神戸史学会のウェブサイトから取り寄せ可能です。
今も人々に微笑む野仏、人々の記憶から(遺構さえも)消え去る航空灯台。どちらも人間が造り出したモノ。航空灯台が廃止されたのは昭和44年(1969)です。
半世紀も経っていない。
必要なくなれば、あっという間に忘れ去られるのでしょうね。人間の創りだしたモノは、美しく物悲しいです。
では、また。
この記事は2015年2月18日に公開した「龍王山に残る戦前の航空灯台跡」をリライトしました。
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