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生駒の古道「辻子谷越でハイキング(大阪側)」

      2015/04/17

昨年、生駒民俗会は生駒市内の古道や街道を紹介した「生駒の古道」(以下、本書という)を出版しました。古絵図や古文書、土地の古老の話などを基に現地調査を行ったもので、古道を通して生駒の歴史や文化を学ぶ一冊です。

生駒の古道

生駒の古道|生駒民俗会


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辻子谷越は難所道だった。

本書は冒頭で紹介したように生駒市内の古道調査を元に編纂されています。生駒山系は大阪と奈良の県境を南北に連なっていますので、大阪側からもたくさんのルートが存在します。

生駒山

東大阪市池島8丁目から見る生駒山

本書で語られる古道のうち、「かいがけ道」と「辻子谷(ずしだに)越」は主に大阪側のルートです。今回ご紹介する辻子谷越は六本ある宝山寺参詣道の一つで、大阪(東大阪市石切)から生駒山を越えて宝山寺に至る道筋です。

宝山寺参詣道

宝山寺参詣道|新参道の石段

大阪で石切さんと言えば、最初に「でんぼ」の神さん、次に石切神社、ついでに明石焼き、我が家では特に七味唐辛子を連想します。(でんぼとはおできのこと)

七味屋

七味屋さん。

かつての辻子谷越は、生駒山の最も高い峠(575m)を越える難所道だったと言います。現在ではファミリー向けのハイキング道です。

途中の見学ポイントを写真と動画で紹介

それでは本書の記述に沿って必見のスポットを確認していきましょう。

ハイキング道の案内板

ハイキング道の案内板|石切駅近く

石切駅の南出口を利用します。近鉄奈良線を利用する場合は、最後尾の列車に乗るのが吉です。

一丁石

民家の庭先で見つけた一丁石(?)

たぶんコレだと思います。庭先と言っても道に面しているので、見学と撮影は可能です。

三差路の起点石

三差路の起点石

生駒山宝山寺三十六丁
鷲尾山興法寺十八丁

立派な道標と石灯籠が立っています。分岐の先にある石切夢観音は閉鎖されたとか。額田の四等三角点へのルートでもありますね。

音川

辻子谷を流れる音川

かつて音川沿いの渓谷には水車が40基以上あったという。音川の豊富な水流を利用した製粉業で栄えたといいます。

今昔マップOn the Web

今昔マップOn the Web|音川流域

100年前の地図でみると、なるほど谷沿いに水車マークが並んでいます。同様に車谷にも水車マークが見られます。雰囲気が似てるはずですね。

辻子谷水車郷

辻子谷水車郷|上石切町昭楠会

復元された水車へ立ち寄ってみましょう。今はコレ一基のみです。

生駒山系(大阪府東大阪市)辻子谷ハイキングコース復元水車

Posted by ふぁんトント on 2015年4月14日

参詣道のお地蔵さん

参詣道のお地蔵さん

コース脇には一定間隔で一対のお地蔵さんが祀ってあります。地蔵菩薩のみとは限りませんが、生駒の人に習って石仏はなんでもお地蔵さんと呼んでしまいます。

石切漢方製薬株式会社

石切漢方製薬株式会社

この前に差し掛かると、漢方薬の苦い独特の香りが漂ってきます。大阪市内(道修町)の薬種問屋と提携し、かつてこの地は先進工業地帯の一つでした。

砂倉橋の道標

砂倉橋の道標

本書では六丁石の存在を示唆していますが、未だ発見に至っていません。亡失したのでしょうか。代わりに砂倉橋の対面に指差しで方向を示す道標が立っています。

砂倉橋|真言宗一成寺

砂倉橋|真言宗一成寺

実はここも分岐で、一成寺の奥から進んで高尾渓の旧道が通じています。高尾渓の沢登りルートは生駒山系でも屈指の渓谷美。オススメしたいところですが、危険なコースなので、一般向けではありません。

高尾渓の様子をチラ見せ

一般向けではないと言いながら、過去何度も歩いています。秋の紅葉シーズンは危険を顧みずに歩きます。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」

生駒山系・高尾渓

辻子谷ハイキングルートから分岐する高尾渓ルート。生駒山系で屈指の渓谷美です。

Posted by ふぁんトント on 2015年4月15日

横道にそれたので、ルートを修正しましょう。

辻子谷ハイキングコースは舗装路が多い

かつては難所道だった辻子谷越、現在ではルートの大半が舗装された歩きやすい道です。もちろん、ヤブ漕ぎなんてないし、道迷いもありません。

宮山分岐

宮山分岐

道標があるので迷いこむ人はいないでしょうけど、軽い気持ちで入るとエライ目にあいますよ。宮山は石切神社の元宮です。尾根を越えた山一つ向こうにあります。

七丁石

七丁石

この辺りでも道は舗装されています。勾配のキツイところでは、雨後は注意ですね。滑ります。

旧道の石畳

古い旧道の石畳が残る道

ここは道が二手に別れて複線になっています。山側は昔の石段が残っていますが、頭上の倒竹が気になりますね。

三味尾

三味尾十三重石塔への分岐

ここは本書で紹介されている七丁過ぎの分岐で、三味尾山の十三重石塔への道です。道は明瞭で整備されていますが、結構キツイです。

三味尾山

三味尾山|十三重石塔

三味尾は「さんまいお」と読みます。本書でルビが振られていなのは不親切。三味とは墓地を意味するらしいです。ココから先のルートも面白いのですが、紹介は自重しておきます。

興法寺の石段

興法寺の石段(2012.05.14撮影)

石段を登りつめると興法寺。春の桜や、秋の紅葉は有名ですが、新緑シーズンもオススメできます。新緑の濃いグリーンが目に染みて癒やされることまちがいなし。

石仏

寛保三年(1743)紀年の石仏

石段から一際目につく石仏です。ほぼ等身大で、口はへの字、頬の膨らみがなんとも言えない表情です。寄進者は肥前国平戸の方、どういう繋がりでしょうか。

登りはここからが正念場

新緑の興法寺

新緑の興法寺(2012.05.14撮影)

山門から北の方向に伸びる分岐は、管理道を経てスカイラインに至る興法寺の物資運搬路です。こぶしの谷方面へ行くときは、近道になりますね。

龍王池

龍王池のベンチから大阪市内を見る

ここからがキツイ。管理道もとぐろを巻いている急坂で、何度か横断して最後の合流箇所が、かつての旧道跡でしょう。

参道の石畳

参道の石畳が残るハイキングコース

興法寺からここまでずっと石畳が整備されてますが、コレが困りモノです。このコースを下りで使うと、必ずと言っていいほど滑ってコケます。

今昔マップOn the Web

今昔マップOn the Web|辻子越の峠周辺

昔の地図ではまっすぐにP587.3へ伸びています。この峠付近に宝山寺経塚があります。

宝山寺経塚

宝山寺経塚(2014.03.23撮影)

一時は草茫々で近寄りがたい雰囲気でした。最近は少しスッキリしたようです。ここから宝山寺までの区間は崩土で廃道になっています。

宝山寺

ナゾの遊歩道(2013.09.09撮影)

昨年(2014)、宝山寺から経塚まで歩いていますので、その様子は続編でお伝えします。どうぞ、ご期待ください。では、また。

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