オーストリアの首都ウィーンに本拠地を置くGarden Gnome Software社は、360°パノラマ写真(動画)からインタラクティブな仮想現実の一種、「バーチャル・ツアー」を作成するデスクトップ・ツール「Pano2VR」(Windows/macOS 対応)の開発・販売を手掛けています。
筆者は、2017年末に*1)PRO版(version 5)を299ユーロで購入しました。当時の為替レートで40,000円近い出費でしたが、その後、屋内版ストリートビューの撮影~公開までの作業に活用、バーチャル・ツアーをウェブサイト用のコンテンツとして作成、そして、それらを請負・販売するなどして、一定の成果を得るに至りました。費用対効果は十分に見合っています。翌年、*2)ver.6へ無料アップグレードし、今日に至るまで、何ら不自由なく使用できていたのですが。。。
2023年11月16日、京都・嵐山で撮影から帰阪し、休む間もなくストリートビューに公開するための準備(現像~スティッチ~コンステレーション編集)に取り掛かりました。Pano2VR ver.6.1.15へ出来立てほやほやの360°写真をインポートすると。。。
「グーグル・マップを読み込めない!」
Facebook Groupにスクショ付きで事情を投稿すると、マップを読み込めない不具合は、ver.6.1.15で発生し、ver.7.0.xに影響ないとの返事を得た。
下に続く。。。
パノラマソフトウェアの定番「Pano2VR ver.7.0.6(7)」への有償アップグレードを行った
150ユーロ(約24,000円)の予期しない出費は痛かった。。。山へ行かれへんやん。
Pano2VR 7 Tutorials(2022.12.7)
2022年1月26日、ベータ版によるバージョン7のリリースが始まり、約1年をかけて同年12月6日に、正式版の登場となりました。目玉となる機能は、Garden Gnome社によるサブスク型クラウド・サービス(Gnome Cloud Hosting)の提供でしょう。もちろん、それに伴うSkinやCustom propertiesなどもリッチ化。インターフェイス周りも操作性を改善しています。
筆者の場合、作成したバーチャル・ツアーは、スターサーバー(容量160GB/SSD 年間3,300円)で管理しています。FTPによるアップロードは手間だけど、Gnome Cloud Hostingに10ユーロ/月(100ユーロ/年)を課金する? 追加のコストを投じて効率化を図るほど、利用頻度は高くない。しかし、バージョン7のアップデートは順調に進む一方で、旧バージョンの不安定さを危惧せざるを得ません。ついに決断するときが来たと言えるでしょう。
Pano2VR ver.7.0.6(7)
複数のグーグル・アカウントを管理
それでは、具体的に旧版との違いについて考察しましょう。筆者は、主にストリートビュー関連を中心に活用しており、すべての機能について精通していません。Pano2VRにおけるストリートビューの立ち位置は、Garden Gnome社にとって”One of them”に過ぎず、単なる「オマケ」程度の扱いなのです。少なくとも筆者は、そのように感じていますよ。(もちろん、これは表向きのポーズから見える印象に過ぎず、内実はストリートビューに依存していると思われます)
Street View Browserの新機能「Maps Status」
私的に最大の関心事(ver.7.0.xにおける)は、Street View Browserのさりげない機能向上です。新たに加わったMaps Statusのタブは、ストリートビュー・アプリ廃止以降(2023年3月23日)、忘れ去られていた「必須機能」を提供。グーグル・マップに公開した画像の「状態」を知ることが可能なのです。*3)Mapsと複数形になっているのは、それが理由です。
「拒否済み」とは、グーグルマップで非公開の状態にあることを示す。(削除はされていません)この状況を明示的に発見する方法は、かつてストリートビュー・アプリが担っていました。現時点でPano2VR ver.7.0.xが唯一の手段となっています。
GoThru ModeratorのSV Info機能は、同ツールから公開、又は、インポートした画像のみを検出、修正する機能です。アカウント全体の状況を知ることはできません。
inaccurately rejected とは?
2019年下期に、Auto Moderationと呼ぶ自動システムが導入され、当初の不具合(誤判定)により、多くの画像を「拒否済み」による非公開扱いとしました。その後、システムの適切な運用により、円滑なストリートビュー画像の公開を支援しています。
※もちろん、ガイドラインに違反した画像は、再公開しても承認されません。
ヒント
ガイドラインを遵守してもグーグルから拒否される場合、以下のことが考えられます。
例えば、ドローン撮影の画像や顔面のクローズアップ画像、また、画像サイズが小さすぎてもダメ。(スマホや360°カメラでの撮影によくあります)
底面のロゴ画像にも注意。大きすぎたり、連絡先やURLを表示するのは禁止です。企業名など著作権的に問題のない画像は大丈夫です。
誤って「拒否」された画像を救出セヨ!
Case.1 撮影:RICOH THETA Z1 / SV Summit in London 2019
では、実際に拒否されていた画像の発見と救出について、当方の事例を3例ほど紹介しよう。(下記事例は、他のツールからの公開や、ローカルに画像を保存していないことを前提とします)
Step.1-1
「拒否済み」を示すRed Crossを見つけたら、適当なフォルダにprojectファイル(.p2vr)を作成、Street View Browserの該当画像を選択し、上部のDownloadボタンを押下。Tour Nodeタブに緑色のリンク・ボタンを確認します。
Step.1-2
グーグルマップからダウンロードした画像を確認すると、人物の顔にボカシをかけていませんでした。海外での撮影だったので、気にしていなかったのかも。Photoshopで今更ながらBlurring処理したった。
Step.1-3
ボカシ処理後、Pano2VRでグーグルマップから「削除→再公開」を行いました。Place IDは同じものを使用。ロンドンでも有名な店頭で2019年9月の撮影。流行り病の影響による閉業等、POI自体の消失も予想されました。残念ながら過去のView数はリセットされるけど、止まっていたカウントが再開しました。楽しみです。
ドローン画像と勘違い?そんなワケないやろ!
Case.2 撮影:RICOH THETA Z1 / Festival of the Lights in Osaka 2019
ライト・スタンドを高く伸ばして高位置からの撮影。イルミネーションの撮影にハマっていた時期ですね。
Step.2-1
Red Cross(拒否済み)を確認してダウンロード。この手順の良いところは、ローカルに画像を所有していなくても、アカウント内の画像を隈なくチェックして作業できる点にあります。過去画像をハードディスクから探しだすのは、正直に言って「チョー、めんどくさい」
Step.2-2
Place IDを確認すると、大阪市役所前のバス停にセットしていました。交通系のPOIは、何かと問題を起こしやすい。運転手不足によるバス路線の廃止に伴い、削除されるケースが増えていくことでしょう。
Step.2-3
まさか、ドローン画像と判断したワケじゃないと思うけど、念のためPlace IDを変更して「削除→再公開」を行いました。古い画像で恐縮です。懐かしんでください。
RICOH THETA Z1発売前のテスト画像
さらに古い画像が拒否(非公開扱い)されてるのを発見しました。2019年当時、THETA事業部分室(Facebook)に参加していたご縁で、発売前のRICOH THETA Z1(2019年5月発売)をご提供(後に返却)いただきました。いつもの山歩きに連れ出して各種のテストを行い、風景写真を中心に撮影。この画像のどこが「inappropriate(不適切)」なんだろう。
Step.3-1
Case.3 撮影:RICOH THETA Z1 / Test shooting with In-camera HDR
とりあえずprojectファイルを作成してダウンロード。写真の出来栄えそのものは、コントラスト低めでイマイチだけど、今となっては貴重な記録です。この頃、RAW現像の知識は、カケラもなかったからですね。
Step.3-2
今度は何も対策せず、単に「削除→再公開」を行いました。そうすると妙なエラー・メッセージをポップアップ。実は、前2回の事例でも同じエラーが出ています。いつもの要領で(あるある現象なので)、気にせずに右上の「×」をクリックして閉じました。
Step.3-3
救出に成功した3画像
このエラーは、Place IDの不一致を警告しており、metadataの反映にタイムラグが生じている、或いは、反映されていないことが原因です。しばらく待ち、Uploadボタン押下でmetadataを上書き。Street View BrowserをRefreshボタンで再読み込みすると、Red CrossからGreen checkに変化することを確認できるでしょう。慌てて「削除→再公開」を繰り返すと、状況を悪化させる「負のスパイラル」に陥ることになりますね。
結論;Conclusion
買ってよかった!
Ver.6に固着していた筆者を、強引にver.7へのアップグレードに導いた突然のChromium遮断に感謝します。今回の3事例でも分かるように、2019年後半に襲った「inaccurately rejected」による影響は、僅かながらに残っています。今後も発生しないとは限りません。これまでは、GoThru ModeratorのSV Info機能を使って解決を図っていましたが、サブスク嫌いな筆者にとって、これほど好都合なツールは、他に存在しないでしょう。
Pano2VRは、One Time Purchaseでフル機能を半永久的に使えるデスクトップ・ツールです。ストリートビューの撮影・公開を強力にサポートしてくれることでしょう。90 days trialを利用して、Gnome Cloud Hosting(クラウド・サービス)も体験してみようと思います。
乞う、ご期待!
あとがき
Garden Gnome社の開発者さんは、筆者の投稿に対して、異例の速さで対応なさいました。1年半ぶりのver.6.1.16リリース(2023.11.17)は偶然でしょうか?。言いたいことはあるけれど、問題解決につき「めでたし、めでたし」です。Maps Statusの機能に魅力を感じないユーザーは、あえて有償のアップグレードを行う必要はないでしょう。この記事が、購入を検討する方々の一助となれば幸いです。
注釈;Notes
- ver.5はPRO版と、機能を限定したLite版に分かれる
- 1世代に限り、無償アップグレードを可能とする
- グーグル・マップの英語名は、Google Mapsと複数形で表現する。GoogleMapじゃありませんよ。