2021年3月10日、約一年間のベータテストを経てリリースされたPTGui Ver.12をご紹介しましょう。※2021.4.4現在、Ver.12.1にアップデート
*1)RICOH THETA Z1の登場により、ワン・クリックで高精細な360°写真を撮影できるようになりました。以来、職人芸的な熟練と知識を要する*2)スティッチ作業から解放され、Panoramanなどの対応サイトで手軽にVR(=Virtual Reality 仮想現実)を体験可能です。
PTGui Pro Versionは、プロフェッショナルな360°撮影の世界において、バリバリ現役で活躍するパノラマ・ソフトウェアの定番。Ver.12では、新機軸「Optimum seam placement」をはじめとする多数の新機能を含むメジャー・アップデートを果たしました。
Optimum seam placement
What’s new in PTGui 12? より抜粋して邦訳引用
下に続く。。。
プロが教える綺麗な360°写真の作り方、撮り方とは?
撮影:IKOMA360, 360 Photographer Toyo Fujita
RICOH THETA Z1で撮影したRAW画像(DNG形式)を、PTGui Pro Ver.12.1(Windows10 Pro /20H2)でスティッチ作業を行い、「Optimum seam placement」を体験してみました。
撮影からスティッチまでの手順
51GBストレージ容量強化版(2021年4月28日発売)
基本アプリでスマホとTHETA Z1をWiFi接続し、カメラ設定の項目でRAW+JPGを選択。RAW画像はカメラ内でスティッチされない*3)DualFisheye Image(双魚眼画像)として保存されます。RAW現像に関する詳細は、THETAラボの記事をご参照ください。
360°写真の撮影
THETA Z1をテーブル上に設置し、スマホ・アプリのリモートシャッターを利用する。独特の世界観はこうして作られると云う。※プロは決して爪垢の溜まった親指を写しません。
PTGui Pro 12へ読み込み
PTGui Ver.11.xx以降、DualFisheye Imageの「二度読み」をサポートします。一枚の魚眼画像に切り離すなどの作業は必要ありません。撮影した画像をPTGuiの画面にドロップすると、内部テンプレートに基づいて、自動的に二度読みを行います。
Align Images一発押下
DualFisheye Imageの黒縁部分を切り取るクロップ、片方の魚眼画像を隠す赤マスク、繋ぎ部位を特定する初期CP(=”Control Points”)設置などを自動的に処理して、大まかなスティッチ結果を返します。
微細なスティッチ・エラーを潰す
ここからが腕の見せどころです。
Panorama Editor画面でAlign Imagesの結果を確認すると、物体の周囲を取り囲むようにギザギザのシームライン。これが「Optimum seam placement」の結果です。シームライン上をDetail Viewerで追いかけると、微妙なズレを発見しました。
マスク処理で追い込む
テーブル端に緑マスク(優先指示)の小さなドットを置いてみることにしました。
トライ&エラーの繰り返し
テーブル端で発生していた目立つスティッチ・エラーを98%回避できました。残りの2%は奥に写っている椅子の脚部に発生しています。しかし、この程度はカンタンに修正可能でしょう。適当なところで切り上げるのが吉。
※PhotoshopにIndividual layersを読み込んで、layer maskで修正する方法もあります。
最後にPhotoshopで修正作業
画像によっては、どんなに追い込んでも消えない「ズレ」が残ります。底面処理の際に、Photoshopのコピー・スタンプ・ツールなどで修正しました。この作業を容易にしておくのも、一つのテクニックと言えますね。
エクスポート/出力
Create Panoramaタブに移動して、出力サイズにオリジナルの7296×3648を設定し、ファイル名と出力先を指定します。QualityとColor Spaceを好みに調整してCreate Panoramaボタンを押下。
360°写真:
https://theta360.com/s/40qdhPWlkeVjLssmYWAosSZPc
Metadataタブで位置情報を書き込んでおくと、グーグルマップへ投稿する際に便利です。
結論; Conclusion
スタンドアロン利用に非公式対応
RICOH社公式のスティッチャーRICOH THETA Stitcher(RTS ver.2.10.1)は、*4)Lightroom Classicのプラグインとして機能します。ほとんどの場合、完璧なスティッチ結果を得られるでしょう。しかし、ごく稀なケースでPTGui等を必要とする場合もあるのです。プロフェッショナルは常に次善策を用意し、顧客の期待を裏切らないと云う。
公式ツール(RICOH THETA Stitcher)においても、PTGui Pro 12と同じスティッチ・エラーを生じており、修正は不可能です。PTGuiを使ってのスティッチは、知っておいて損のない手法と言えそうです。
SAMYANG F3.5/7.5mm Fisheye Lens
今春期待されたTHETA Z1後継機(Z2 or Z1s)のリリースはありませんでした。*5)VT界隈は不満と苛立ちで満ちています。しかしながら、51GBに増量されたnew THETA Z1が世界のトップに君臨する360°カメラであることに変わりなく、フラッグシップ機の地位に揺らぎはありません。一人のユーザーとして、”Trustworthy Japanese Product“に誇り感じます。
SAMYANG製の魚眼レンズをゴニョゴニョして、PTGui Pro 12の性能をさらに引き出そうと言う計画に着手しました。THETA Z1の画質を上回ることができるのは、もはやコレしかないのです。
結果や如何に?
注釈
- *1)2021年4月末、ストレージ容量51GB版を再販
- *2)複数の画像を1枚の正距円筒図に繋ぎ合わせること
- *3)前後の魚眼レンズで撮影した画像のこと
- *4)Adobe社提供のサブスクリプション型有料ツール
- *5)欧米を中心としてVirtual Tour作成に関わる人たち