インターネットが今ほど普及していなかった2000年初頭頃。世紀は変わっても、世の中は今よりもゆったりと流れていました。地名は元より、山名における誤りも、一度定着すると簡単に修正できず、長く困難な道のりを強いられたのです。
12年振りに歩いた紀泉アルプスの人気コース。多くの登山者に愛される地にあっては、名称に対する思い入れもひと際強いものを感じます。後年になって、新ハイキング関西の山No.102(2008年8月発行)に寄稿された「山のレポート」(「籤法ヶ岳(くじほうがだけ)」が「懴法(せんぽう)ヶ嶽」に改称された理由)を読みました。それによると、上掲の写真を撮影した前年に、国土地理院発行の地形図上で「籤法ヶ岳」の山名は、消えていた事になります。また、同レポートの著者・柴田昭彦氏のウェブサイトには、次のような記載がありました。
山ものがたり-引用-
下に続く。。。
紀泉アルプス「雲山峰~泉南飯盛山」日帰り縦走
今年も「紀泉アルプス」を歩く季節がやってきました。故・中庄谷直氏の名著「関西の山 日帰り縦走」(ナカニシヤ出版・平成10年)から、興味深いルートにチャレンジ。20kmを超える縦走道は、じわじわっと太ももに疲労を蓄積します。足が攣る前に芍薬甘草湯の服用は欠かせませんよ。※顆粒をお湯に溶かして飲むと「甘い」って知ってた?
「懴法ヶ嶽」周辺ルートの最新状況
前回の訪問から12年の月日が流れました。ルート途上の案内版は、私設・公設に関わらず全て「懴法ヶ嶽」に統一された一方、「籤法」と誤用された歴史は忘れ去られようとしています。
90年以上放置された誤った名称
柴田氏の著述によれば、実に90年以上もの長きに渡って山名を間違えて記していたと云います。現在、標高381mの山頂には、「改称された理由」の一部抜粋を掲示してありました。抜粋元のレポート記事には、「地形図の表記の変遷」を大正11年から平成13年まで複製されていて興味深い。最初は漢字の誤用だったものが、読み方が不詳となり「くじ」のルビを与えられていきます。最後は標高381mを981mと誤植するミスまで呼んでいる。
かつて「籤法ヶ嶽は二山あり」と掲示されていた同じ場所に、その「改称された理由」は括り付けられていました。同じ人の手によるモノだったら、尚更興味深いですね。
この10年余りの期間で籤法(くじほう)の名称は一掃されていました。二山ありとされる懴法ヶ嶽は「東峰」と「西峰」に区別され、絶好の展望スポットとして憩える場所です。山中渓駅から縦走道を駆けて来ると、この辺りで両脚に蓄積された疲労を感じ始めていました。残念ながらゆっくりと景色を楽しむ余裕はなかったのです。気持ちは大福山から札立山に飛んでいたからですね。※札立山には目標としていた14:00頃に到着。ようやく最後まで歩き切る見通しが立ち、ホッとしました。
「見返り山」命名のキッカケはインターネット黎明期を象徴する出来事(古名:金剛童子山)
雲山峰~飯盛山間を繋ぐ20km超の縦走道は、いくつものピークを踏む面白いルートです。名もないピークもいくつかあり、足を止めて撮影していては、一向に目的地へ到達できません。「見返り山」の山名は、昭文社発行の「山と高原地図」に記されており、六十谷古道を分岐する重要な位置に存在します。
紀ノ川を見渡せる絶景のポイント。2008年に初めて訪問した際にも、きっとこの風景に「ぴったりと合う山名」と思ったに違いありません。新ハイキング関西の山No.104(2009年1月発行)に寄稿されたコースガイド「岩神山」によると、かつては無名のピークであったと云います。山頂に設置された道標には、古名「金剛童子山」と併記されていました。
金剛童子山の由来
YAMAPの山名登録
YAMAPでは、ユーザーの提案により山名を地図に登録できるようになりました。登頂するとアプリで通算されます。多数の山名が登録されており、地理院地図などで紹介されないどマイナーな山々も登録されています。
YAMAPで楽しい山歩きを!
Google Mapsに登録される山名「星田60山」
マイマップ 星田60山
星田エリアは多数のピークに山名を表示し、迷路のように入り組んだ尾根道を、激しく登り下りすることで多くのチャレンジャーを招き入れました。2016年1月に、朽ちて消失する山名プレートに危機感を覚えて、一念発起したことがあります。しかし、グーグルマップにまで手を付けたのは当方ではありませんよ。聖滝を登録したのは、アテクシで間違いないですけれど。。。
東佛底山 263.5m 撮影: RICOH THETA Z1
「ハイキングコース」での登録は、他のユーザーから「不適切」との編集提案を招くかも知れません。インターネットが高度に発達した現在においては、最終の判断を下すのは人工知能(AI)です。時には不可解な判定結果もあり、そのプロセスは全くのブラックボックス。今後の成り行きを見届けましょう。最後に数々の山名・地名を考察された柴田氏の言葉を紹介します。
随想(山のエッセイ)-引用-
『日本山名大辞典』をそっくりそのまま『グーグルマップ』に置き換えると、何か思い当たることがあるかも知れません。え?いっぱいあるって。。。
健闘を祈ります。